- 更新 9/3, 2008 -





「関連性評定に基づく質的分析」サイト

札幌学院大学人文学部臨床心理学科 葛西 俊治

 このサイトは、臨床心理学、看護学、教育学、社会学等々、援助を前提とする研究実践領域において、一人あるいは比較的少数の人々を対象とする ような質的研究を推進することを目的としています。特に「関連性評定質的分析 Relatedness Evaluation Qualitative Analysis」(略称 KH法)という方法について解説することを目的としています。
[English site]

「関連性評定質的分析による逐語録研究 ― その基本的な考え方と分析の実際 ―」
札幌学院大学人文学会紀要 第83号,61-100,2008 (pdfファイル)



 現行の数量的アプローチは統計的有意性検定を前提とするために、多く人々を対象とした調査や実験を必要とします。それによって、特定のテーマに関する平 均的で中心的で、いわゆる「一般的」な知見を得るわけですが、心理面接などの場や、様々な状況下にある現場では、「多数の無作為標本」を得るという統計学 の要請はほと んど不可能といえます。もし仮に、いわゆる「一般的」な知見が得られたとしても、それを様々な状況と要因によって多様である現場に適用するには、あまりに も一般的で抽象的に過ぎて、現実には役立たないことも多いといえます。

 方法論に関する以下の論文をご覧ください。 →[葛西:紀要論文サイト]

 そうした現状の中で、たとえばグラウンデッド・セオリー(GTA : Grounded Theory Analysis)や解釈学的現象学的分析(IPA: Interpretative Phenomenological Analysis)などが開発され、前者は主に看護学領域などで活用され、後者は健康心理学領域で活用されるなど、質的アプローチは一定の進展を見せ研究 上の実績も積み重ねられてきています。

 それに対して、このサイトで紹介していく質的アプローチ KH法「関連性評定(に基づく)質的分析」は、従来、KJ法によって進められていた方法を理論的および 実際的技法の両面から見直すことによって組み立てられてきました。

  1. 逐語録などの主に言語的資料をカード化する。
  2. カード布置の第1段階
    1. 意味内容の極めて似たカードがあれば重ねておく。
    2. 意味内容のよく似たカードがあればそばに寄り添わせておく。
    3. そうした作業を進めていき、それ以上、重ねたり寄り添わせる余地がなくなった時点で、グループ形成の最初の段階を打ち切る。
    4. カードグループに、その内容を適切を表すラベルをつける。
  3. カード布置の第2、第3,…段階
    • ラベルがついたカードグループは、そのラベルで代表してあたかも一枚のカードのように扱う。
    1. 意味内容の極めて似たカードやラベルカードがあれば重ねておく。
    2. 意味内容のよく似たカードやラベルカードがあればそばに寄り添わせておく。
    3. そうした作業を進めていき、それ以上、重ねたり寄り添わせる余地がなくなった時点で、グループ形成を打ち切る。
    4. 形成されたカードグループに、その内容を適切を表すラベルをつける。
  4. カードのグループ形成とラベル付の作業を、必要に応じて何回か段階を上げて実施する。
  5. カードやラベルカードについての集約作業がおおむね集束した段階で「カード布置」作業を終わる。
     という方法の実質はKJ法ゆかりのプロセスですが、以下に示す数量的分析を行うために、いくつかの理論的考察と実際的方法を付け加えていること、また、カードやラベルカード同士の「関連性」を判断することに基づく質的アプローチという意味で「関連性評定(に基づく)質的分析」と呼んでいます。

     *言語資料の「要約」に該当する以上の作業において、「関連性」とは基本的に「意味内容の類似性」を指しています。「要約」段階に引き続く「解釈」に関わる段階では、「関連性」は類似性に限定されず、因果性・帰属性・条件性・推移性・並行性などといった多様な意味で用いられます。詳細は論文(葛西,2008)をご覧ください。



    さて、カード群の空間配置に基づいて、次のようにして分析を進めていきます。
  6. カードとラベルの対応関係を表す{1,0}からなる「対応表」を作成する。
  7. その対応表を「林の数量化理論V類」によって分析する。
  8. その対応表を「長田の形式概念解析」によって分析する。
 数量化理論V類はしばしば類比的に「質的因子分析」と呼ばれることがあり、ラベルの相互関係をいくつかの 次元軸上 に位置付ける方法です。また、長田博泰氏(札幌 学院大学社会情報学部社会情報学科教授)によって開発されている「形式概念解析 (FCA: Formal Concept Analyasis)」プログラムは、ラベル間の構造を「概念束 concept lattice」として論理的に把握して図示することができます。

*最近の研究に基づくと、「形式概念解析」は、時間経過に関わるテーマ、例えば、発達的な内容や、何回かの面談の経過などを質的に分析する「概念的時間シ ステム解析ツール」としても使えます。(3/28,2007追記)

 こうした数量的な解析を参考にすることで、研究対象としている逐語録などの言語的資料について、その意味的な構造の「要約モデル」を、 より的確に提起す ることができます。


.


「関連性評定に基づく質的分析」サイト
 (C) 札幌学院大学人文学部臨床心理学科 葛西俊治, 2007-2008


*無断転載をお断りいたします。


- since 3/14,2007 -